日本経済

少子化対策のための財源は何が正解なのか?国債一択です!

snowball

2023/05/17、政府において第3回こども未来戦略会議が開催されました。

少子化対策のための財源の詳細な議論は次回の会議で行われるようですが、現在、政府は公的医療保険の保険料に上乗せする案を検討しているようです。

経団連は「消費税を含めた税制議論が必要」と言っていましたが、それについては今回は見送るようです。

防衛増税や今回の少子化対策のための社会保険負担増について喧々諤々の議論がなされているところですが、今の日本にとって、その財源は何がベストなのかについて考えてみたいと思います。

少子化対策の財源議論を巡る最新情報

6月の骨太の方針に少子化対策の財源について入れるようなので、それまでに色々と議論が噴出することが予想されるので、最新情報をここにまとめていきたいと思います。

情報ソースは公式情報や各種プレスから引用していきます。少子化対策の話は、「子ども未来戦略会議」で決まっていきます。「子ども未来戦略会議」(内閣官房)のHPはこちらです。

少子化対策 最新情報まとめ
  • 少子化対策のための財源は、歳出改革と社会保険料負担増で賄う(社会保険料の増額は2026年度から実施し、それまではつなぎ国債で対応する予定)
  • 児童手当の対象者に高校生を新たに加えることにより「扶養控除(16~18歳)」を見直す可能性あり
  • 少子化対策のための費用負担を明確化するため、新しい特別会計「こども金庫」の創設を予定
2023/05/22
第4回 子ども未来戦略会議が開催
  • 岸田総理から今後の財源の方針が示される
    「大前提として、少子化対策財源確保のための、消費税を含めた新たな税負担は考えておりません
    まずは歳出改革による財源の確保を図る」
    国民の実質的な負担を最大限抑制する」
    2023/05/22 日テレNEWSより引用
  • 社会保険料2026年度にも引き上げか
    政府は2026年度にも社会保険料を引き上げる方向で調整している。
    2023/05/23 読売新聞オンライン記事より引用
  • 政府内にて、「扶養控除見直し」案が浮上
    18歳まで支給を延長した場合、現行制度で16~18歳に適用されている「扶養控除」を見直す案が政府内で浮上していることが22日、政府関係者への取材で明らかになった。」
    2023/05/22 毎日新聞記事より引用
  • 少子化対策、増税先送りへ 十倉経団連会長「消費税排除するな」
     財源を議論する政府会議のメンバーである経団連の十倉雅和会長は22日の記者会見で、「少子化対策は中長期の話で、日本社会全体の問題でもあるから、全員が広く薄く負担すべきだ」と指摘。「企業が負担するのもやぶさかではないが、消費税を排除すべきではない」と述べた。
    2023/05/23 時事通信社記事より引用
2023/05/24
  • 児童手当、18歳まで月1万円支給 対象を拡大 政府方針
     岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策」を巡り、政府は児童手当について、新たに18歳まで月1万円を支給する方向で調整に入った。現在は中学生までとなっている支給対象を拡大する。
    3歳~小学生の第3子以降については、現在の月1万5000円から3万円に倍増することを検討しているほか、所得制限の撤廃も実施する方向だ。
    2023/05/24 毎日新聞より引用
  • 少子化対策で「こども特例公債」発行へ…財源確保まで不足分を穴埋め
    政府は2024年度に始める「次元の異なる少子化対策」の財源として、国債の一種である「こども特例公債」(仮称)を2年程度にわたって発行する方針を固めた。こども特例公債は、将来の社会保険料の引き上げなどで確保する財源で償還する「つなぎ国債」とする方針だ。
    2023/05/24 読売新聞オンラインより引用
  • 少子化財源、社保上乗せ500円 月額1人当たり、政府検討
    政府が「次元の異なる少子化対策」の財源確保策として、社会保険料への上乗せで国民1人当たり月500円程度の負担増を検討していることが分かった。
    2023/05/24 共同通信 引用
2023/05/27
  • 自民・茂木氏「こども金庫創設」と明言 少子化対策
    新しい特別会計『こども金庫』を創設し、費用負担の見える化をまず進める予定だ」と明言した。
    2023/05/27 産経新聞より引用
2023/05/31
  • 子育て政策の財源は「年末までに結論」と先送り 政府の素案に明記へ
    子ども・子育て政策の強化については「具体的な内容、予算、財源を一体的に検討した上で、年末までに結論を出す」と明記。
    2023/05/31 朝日新聞から引用

※各種引用の中の強調下線は筆者

政府の少子化対策案についての私の感想

「本気で少子化対策やる気あるのかな??」っていうのが正直な私の感想です。

コストをかけて、子育て世帯からお金を取って、それをただ配り直しているだけの印象です。扶養控除の見直しで、場合によってはマイナスになる場合もあります。

デフレギャップがあり、実質賃金が減っている中で、国民負担率を上げる社会保険料負担増はマクロ経済政策的にもアウトですし。

新しい特別会計を創設することを自慢しているようですが、やることは新しいお財布を作るだけです。財源論の中身がきちんと議論されてない中では、正直、やりましたよ感を出そうとするための政策にしかみえません。

個人的には、最初から財源として国債が排除されて段階で、この少子化対策には疑問符がついていました。なぜなら、国債を使わないとなると、財源の捻出方法が、「歳出を削減」、「国民負担の増」でしか賄えないからです。デフレギャップで需要不足が続いてきた日本にとって両者はマイナスでしかないです。

児童手当の改正動向について

今回の少子化対策の目玉事業である「児童手当」の改正動向について随時まとめておきます。

現行制度の内容は、内閣府の児童手当のHPを参考にしてください。

図表中変更点は赤字にしてあります。ポイントは3つです。

児童手当の改正動向のポイント
  1. 高校生を新たに給付対象として、10,000円を給付する。
  2. 「3歳以上小学校修了前」について、第3子以降を30,000円に増額する。
  3. 現行制度に存在する「所得制限」を全面的に撤廃する。

国債の発行で財源を賄うのがベスト!

いきなり結論ですが、防衛力強化のための財源、少子化対策のための財源、どちらも今の日本にとっては国債の発行がベストな財源調達手段になります。

何を財源とするのかは、その国の財政金融制度や経済状態によって異なります。あくまで、今の日本の状況を考えた場合、国債がベストだというわけです。

理由は下記の2点です。

どうして財源確保の手段として国債がベストなのか
  1. デフレ・ギャップが存在しているから(需要<供給の状態である)
  2. どちらの政策も将来世代に恩恵が及ぶから

デフレギャップがある

経済全体の需要と供給を比べたときに、どちらが大きいのかという話です。日本の場合は、長い間、「需要<供給」というデフレ・ギャップが続きました。

要は物やサービスを生産しても需要がないから売れない状態が長く続いたということです。

「GDPギャップ」内閣府

日本は1990年代後半からデフレに突入しました。そこからデフレ・ギャップが長く恒常的に続いていることがグラフからわかりますね。グラフ上は0より上がインフレギャップ、0より下がデフレギャップです。

経済全体の需要がそもそも足りてないのだから、まだまだ需要を追加する余地がある状態です。不足している需要を埋めてあげれば、経済が回復してきます。

政府が国債を発行して政府支出を行えば、少子化対策や防衛力強化もかなって、しかも、日本経済全体にとってプラスとなります。デフレギャップが埋まるまでは、政府が支出を行っても、デマンド・プル・インフレは発生しづらい状態です。

増税も社会保険負担増も国民の可処分所得を減らす

増税と社会保険負担増の共通点は、国民の可処分所得を減らすということです。

税金や社会保険料が上がることで、自分が使える手取り額が減ってしまうということです。手取り額が減れば、国民は消費や投資がしづらくなります。

デフレギャップが存在している日本では需要が不足している状態です。可処分所得の低下は、さらなるデフレギャップを生じるリスクを生みます。

この点、国債の新規発行による可処分所得の低下を招きません。現代においては、負債の発生は、貨幣の創造につながります(この点はわかりにくいので、興味がある人は私のこちらのnoteを御覧ください。)。

政府が国債を発行することで、誰かの負担を増やさずに、少子化対策のための政策を行うことができます。

どちらの政策も将来世代に恩恵が及ぶ

国債を発行するかどうかのポイントとして、その政策を執行することで、将来世代に恩恵が及ぶかどうか、というも大事です。将来世代に恩恵が及ぶ場合、国債を財源とすることは、理にかなっています。

その点、防衛力強化も少子化対策も、将来世代に恩恵が及ぶ可能性が非常に高い政策です。この点についてはかなり自明であり、誰もが認めるものではないでしょうか。

帝都復興院総裁として関東大震災の復興を担った後藤新平の話

有名な話として、1923年の関東大震災発生時に、内務大臣兼帝都復興院総裁として対応にあったた「後藤新平」の話があります。

彼が復興をするにあたって一番最初に決めたことは、「その財源を国債でまかなう」ということでした(なんと素晴らしい決断でしょうか!)。

地震によって破壊された都市を再生することは、現役世代はもちろん将来世代に恩恵が及ぶ政策です。

そのためその復興費用は現役世代の費用だけではなく、将来世代の負担も含めて考えるのが経済合理的です。

後藤新平は20C前半に経験からそのことをわかっていた数少ない人物でした。

関東大震災のときの後藤新平の判断はナイスでした。

ちなみに、記憶に新しい2011年の東日本大震災の財源はどうしたのでしょうか。なんと日本政府は、震災で日本半分が大打撃を受けたのに、復興増税を行いました!

所得税に付加する形で現在も復興増税を払っています。反面教師として未来永劫歴史に残るであろうダメダメ政策です。

日本国民の多くが、「お金」について正しく理解していない

デフレギャップが存在しており、将来世代に恩恵が及ぶ、二重の意味で国債発行をすることが正当化されます。それにも関わらず、日本政府(多くの国民)は、増税や社会保険負担増という現役世代かつ既存の財源のみを調達手段とするのでしょうか。

実はその原因は、日本国民の大多数が(政府、国民、政治家、官僚、財界人)、「貨幣(お金)」という存在を正しく理解できていない、ということなのです。

財源は限られており、何かの財源を削って捻出しないといけない、と皆が誤解しています。ゼロサムゲームの思考ですね。

しかし、お金は、結論をいうと、「認識であり、信用と負債(債権と債務)の記録」です。いってしまえば、お金は単なる【情報】です。

財源が限られるということはないですし、日本国民の多くが、お金についての正しい認識さえ持ちさえすれば、財源は簡単に創れてしまいます。プラスサムゲームの世界があるということです。

皆さんがお金についての正しい認識を持てば、投票行動などを通じて、日本政府の政策を変えることの可能です。

ぜひ、この少子化対策のための財源、防衛力強化のための財源という、タイムリーかつ自身にも影響が及ぶ問題を通じて、正しいお金の理解・認識を獲得しましょう!

正しいお金の認識があれば、投資や経済をより深く理解することができるようになります。

この記事を読んで貨幣について興味を持ち、お金の本質を理解しようと思った人は、ぜひ下記記事とnoteを読んでみてください。経済や投資の見方が大きく変わりますよ。

ゆきだるまの「お金の本質がわかるnote」

お金は「認識」であり、「信用と負債(債権と債務)の記録」。これがお金の本質です。

お金の本質を理解することで、経済や資産形成への理解度が格段と上がります。お金を使わない日はありません。資本主義で生活する人すべてが必見のnoteです。

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長期投資家
【公務員・会社員に向けて資産形成の方法を発信するアカウント】元地方公務員|資産0からスタート|30代前半|億り人|インデックス投資(全世界株式)|個別株|暗号資産|NFT|コアサテライト戦略|長期分散投資|副業|家族で資産形成|お金と時間、両方がある豊かな人生|
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